使役動詞の中で、補部にネクサス目的語(主語+述語の構造が埋め込まれているもの)をとるものを手段動詞(instrumental verb)と呼んでいる。

この手段動詞は使役・移動構文か結果構文として使われる。
使役・移動構文の例は以下である。
(1) Sam helped him into the car.
(2) Mary urged Bill into the house.

結果構文の例は以下である。
(3) The gardener watered the tulips flat.
(4) The cook scrubbed the pot shiny.
(5) John pounded the meat flat.
(6) Charlie laughed himself into a stupor.

この両者の違いであるが、使役・移動構文は「方向の変化」を示すが、結果構文は「状態の変化」を示す。(1)(2)は、車の中へ、家の中へという方向性が明らかである。一方、結果構文は(3)花がつぶれた、(4)鍋が輝いた、(5)肉がぺちゃんこになった、(6)ぼーつとした、のように状態の変化を示す。

両者の関係として、物理的な変化を示す使役・移動構文のメタファーとして成立したものが多い。

例えば、He drank himself into the grave. 文字通りには「酒を飲み過ぎて、自分を墓場の中に入った」の意味になる。実際に物理的に「酔って墓の中に入った」とも考えられるが、一般的には、比喩的に「酒を飲み過ぎて死期を早めた」という風な解釈が普通である。

これらの構文は「動詞+ネクサス目的語(主語+述語)」の「動詞」の部分に手段の意味を内蔵する動詞をはめ込むことで、使役動詞化されるのである。water という動詞ならば、水をかけることで、flat, wet, swollen のような形容詞と呼応するので、述部にこのような形容詞が入って使役動詞としてのはたらきをする。しかし、dry, burning のような形容詞とは呼応しない。その意味では、呼応する形容詞の種類は選択的である。

これらはmake/let/get +~ingを用いて書き直すことができる。
(7) Charlie got himself into a stupor by laughing.
(8) The gardener made the tulips flat by watering them.
(9) The cook made the pot shiny by scrubbing it.

ただし、make/let/getが単純に使ってある次のような例では、単に~させたという使役の意味だけであり、どのような手段を使ったのかということは示されていないので、make/let/get +~ingという形に直すことはできない。
(10) Our team made Jiro captain.
(11) This news made her happy again.

このように使役動詞が最も基本的に使われる場合は、手段を示すことはない。あくまでも、手段を示したいときは、by ~ ing のような語句を加えることで示すことができる。

それに対して、手段の意味を内蔵する動詞を「動詞+ネクサス目的語(主語+述語)」の構造内にはめ込むことで、使役の意味を示すことができる。

(参考)

安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社