must とhave to はどのように異なるか、と生徒から質問されることがある。その時は、「意味は同じである」と言って差し支えがないだろう。ただ、使い方によって若干異なる意味が出てくると説明したほうがいいだろう。

must では、未来や過去を表すことができないので、have to を用いるという説明が可能である。I had to go to Tokyo.  I will have to go to Tokyo. のように用いれば過去や未来を示すことができる。

また、否定文にするときには、意味が異なることは説明すべきである。You must not go.  「あなたは行ってはいけない」で強い禁止の意味になるが、You don’t have to go. 「あなたは行くには及ばない」と不必要であることを示す。

ただ、生徒には have to がどうして「義務」の意味になるか納得できない場合がある。そのときは、have + to 不定詞 に分けて説明するとよい。”to go to Tokyo” と”You have” に分けるのである。「あなたは東京に行くべきだ」とは、「東京へ行くこと」を「あなたが持つ」と分解できると説明すると生徒も納得しやすくなる。

なお、must とhave to の両者にはある程度の意味の違いがあるようだ。江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)によれば、次のようである。

(a) You must go.  (=You are obliged [by me] to go)

(b) You have to go.  (=You are obliged [by circumstances] to go) 

上記の例文が示すのは、(a) は話者が課する義務で、(b)は周囲の状況が課する義務である。(a) は話者が君は行くべきだと命令しているようなニュアンスがある。(b)では、たとえば、親が急病なので、そのような状況では行かざるを得ない、というようなニュアンスだ。

ただし、主語が You, He, She ならば、両者の差がはっきりするが、主語がWe, I ならば、周囲の状況から課せられたとしても自分で決断するのであるから、両者の意味の差はほとんどなくなる。