人に何かお願いをするときは、間接的な言い方をすることが多い。そのために過去時制を用いることがある。そのことを安藤(2012:98)は儀礼的過去と呼んでいる。

お願いをするときには、Please help me.  のような言い方はかなりぶっきらぼうであり、次のような言い方がより丁寧な言い方になる。

(1) I wonder if you could help me.
(2) I wondered if you could help me.

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上記の(1)と(2)は、丁寧さにおいて同じではなくて、(1)よりも過去形にした(2)の方がより丁寧になる。(2)は別に過去において「~してくれないかなと思った」というわけではなくて、あくまでも現在の気持ちを示している。過去形を用いることで、依頼する事柄が間接的になり、控えめになる。この効果は遠景化 (distancing) と言われている。

さらに進行形にすると、より丁寧になる。それゆえに丁寧さに関して以下のように (3)→(6) のように丁寧度が増していく。

(3) I wonder if you could help me.
(4) I am wondering if you could help me.
(5) I wondered if you could help me.
(6) I was wondering if you could help me. と

なお、内容的には疑問文であるので最後はピリオドの代わりに疑問符をおくことがある。

(7) I was wondering if you could help me ?

英語では、過去形が間接的な関係・丁寧さを示すが、日本語も同じであるとの指摘がある。英語学習サイト RAVCO では次のように述べている。「日本国内での接客用語として使われている「1,000円のお預かりでよろしかったですか」という過去形は、あえて過去形で表現することによってお客さんとの距離感を取り、「丁寧感」を出そうとするものだと思われます。」

たしかに、日本語でも相手のものを欲するときは、「それが欲しいですけど」と言うよりも、「それが欲しかったですけど」と言った方が丁寧な言い方になる。

参考: 安藤貞雄 (2012) 『現代英文法講義』 開拓社