2015-12-25

SVO型とSVOO型の書き換え

一般に、SVO型とSVOO型は書き換えが可能とされています。しかし、厳密に言うと、意味が異なります。どのように異なるか、情報構造の視点から見ていきましょう。
(a) I gave Mary a watch. (私はメアリーに時計をあげた)
(b) I gave a watch to Mary. (私は時計をメアリーにあげた)

ここで、(a)はSVOO型でa watchに焦点がありますが、(b)ではSVO型でMaryに焦点があります。強調したいものが何であるかによって文の構成が変わります。ここでは、(a)は(c)の質問の答えとして、(b)は(d)の質問の答えとして対応します。

(c) What did you give Mary? (君はメアリーに何をあげたの)
(d) Whom did you give a watch to? (君は誰に時計をあげたの) 

つまり、(a)では、Maryが旧情報となっていて、watchが新情報となっています。(b)ではwatchが旧情報で、Maryが新情報となっています。いずれも旧情報→新情報という配列になっています。

新情報と旧情報の位置

新情報が後ろにきて、旧情報が前に来るのが自然ですが、bookとgirlに不定冠詞と定冠詞が付いた場合を考えてみましょう。
(a) John gave the book    to a girl.
                         旧情報   新情報
(b) ?? John gave a girl    the book.
       新情報  旧情報
(c) John gave a book    to the girl.  
                          新情報   旧情報
(d) John gave the girl      a book.
                         旧情報   新情報

(a)は、新情報が後ろに来て自然な文です。(b)は、旧情報が後ろに来るので不自然な文となります。(c)は旧情報が文末に来ますが、自然な文となります。(d)は新情報が文末にくるので自然な文です。

 ここで、(c)ですが、何故に旧情報が文末にあっても自然なのか、と疑問を持たれる人がいるかもしれません。実は、SVO+to~という与格構文はそもそも無標であって、談話的に中立的な構文なのです。談話的に中立とはどちらが新情報、旧情報であっても認められることを意味します。元来はこの構文だけが存在していて、談話的にあらゆるケースに対応しており、直接目的語と間接目的語は、旧情報→新情報、新情報→旧情報のどちらの流れになっても容認していたと考えられます。

(c)が答えとなるような質問として、What happened? のような質問が考えられます。What happened? に対しては、答えは談話的に中立的な構文が望ましいでしょう。 (c)が答えとなるような他の質問、例えば、(e) What did John give the girl? という質問があった場合に、(c)は中立的な構文なので答えとして問題はないのです。しかし、その文を、より談話の流れに乗せるために(旧情報→新情報という形にするために)作られた構文が(d) John gave the girl a book. のような二重目的語構文なのです。この文は a book を文末に持ってくることで、はっきりと a book に焦点を置くために作られた文なのです。

言い換えると、(a)と(c)の与格構文では、直接目的語と間接目的語のどちらが新情報でも旧情報でも構わないのです。しかし、(b)(d)の2重目的語構文は、与格構文を発展させて、旧情報→新情報という配列にするためにわざわざ作られた構文なので、(b)のように配列が逆である時は不自然な文になります。

SVO型が基本であり、そこからSVOO型が派生してきたと考えられます。談話の構造(情報の流れ)に合うようにするために、SVOO型が生まれてきたのですから、より談話の構造に合う英文になることが強く求められます。つまり、意味的な制限をSVO型よりもより強く受けます。

二重目的語構文の受動化

二重目的語構文を作る理由は、繰り返しますが、間接目的語が旧情報を担い、直接目的語が新情報を担うことをはっきりさせるためなので、受動文を作る場合は、旧情報を担う間接目的語を主語にしやすくなります。(a)の受動文として、(b)と(c)を考えてみましょう。
(a) John gave the girl a book. (ジョンはその女の子に本をあげた)
(b) The girl was given a book. (その女の子は本をもらった)
(c) ?A book was given the girl.

(b)では、新情報であるa bookは受動文でも文末に残り、談話の原則に沿うようになっています。ところが、直接目的語を主語にした受動文(c)はかなり不自然です。ただし、(d)は問題ありません。これは(e)という中立・無標な与格構文を受動文にしたのですから、不自然さはありません。
(d) A book was given to the girl. (本がその女の子にわたされた)
(e) John gave a book to the girl. (ジョンは本をその女の子に渡した)

練習問題

左の質問と右の答えがつながるように線で結びなさい(つながる先は重なってもよい)。

(1) What did you give to Sumiko? ・     ・ I gave the present to Sumiko.
(2) To whom did you give a present? ・    ・ I gave Sumiko a present.
(3) What did you do? ・

photo credit: Gift via photopin (license)
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