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英語には二重母音(diphthong)と三重母音(triphthong)がある。母音が2つ、あるいは3つ並んでいる3音だと考えるのは正確ではない。
二重母音
二重母音は/ aɪ/や/ɪə/などである。二重母音というのであるが、二つの母音が並行的に並んでいるのではない。日本語の「愛」は/ai/であり、/a/と/i/は別々の母音である。別々にしっかりと発音される。
ところが、英語のfine などは、/faɪn/では、音が日本語の「愛」とは異なる。fine では、まず第一要素の/a/が発音されるが、そのあとで舌の位置が、/ɪ/の方向に向かう。つまり舌が高くなるのである。調音位置が高めになる。必ずしも、/ɪ/の位置まで達しない場合もある。そして、第二要素の/ɪ/はあんまりはっきりと発音されない。
この場合は、/a/から/ɪ/へ舌が移動するときに、途切れることなく、滑らかな感じで音が出される。始まりの音と終わりの音を比較すれば音質は異なるが、調音器官である舌が滑らかに移動することによって、聴覚的に1つの母音として認識される。「ア~ィ」というような感じで発音される。
三重母音
三重母音は、例としては、fire, tire, wire などに現れる/aɪɚ/の音、our, hour などに現れる/aʊɚ/などがある。それぞれ第一要素の/a/がしっかりと発音されるのだが、それに続く第二要素、第三要素は添え物のような働きである。
具体的には、三重母音の音の中心は最初の母音であるので、/a/ の音をまずはっきり明確に発音し、その直後に第二要素の母音を短めに添えてから舌の緊張をふっと抜くときれいに発音ができる。この三つの要素を別々に発音するのではなくて、一つの音として、滑らかに発音するようにする必要がある。
なお、最後の要素の/ɚ/であるが、アメリカ英語では/r/の音のように聞こえることがあり、それは r-coloring と呼ばれている。