前置か後置か

英語の形容詞は、修飾する語の前に来るか(前置)、後ろに来るか(後置)によって意味が微妙に異なる。

the river navigable / the navigable river を比較すると、後置された場合は、「一時的に航行が可能」な川という意味であるが、前置された場合は「常に航行が可能な」川という意味になる。

形容詞は前置された場合は、そのものの永続的な性質や状態を示す傾向がある。tall, heavy, old は常に変わらない性質や状態である。一日で背が高くなったり低くなったりはしない。それゆえに、tall, heavy, old などは前に置かれることが普通であり、後ろに置かれた次のような語句 *a man tall, *a mountain high, *a cat old を含む非文となる。

限定用法と叙述用法

ここで、形容詞の限定用法と叙述用法を考える。名詞の前に付く場合は限定用法とされる。またSVC のような構文で補語となる場合は叙述用法である。限定用法では、永続的な性質を示し、叙述用法では、一時的な性質を示す。

Those are sharp sticks. 常に鋭い棒の意味となる。 
Those sticks are sharp.   何らかの理由で一時的に鋭くなった棒の意味である。

叙述用法では、その文の表す時間概念の影響を強く受ける。そのために、時間指定が緩やかな場合は永続的な性質や状態を示す語も現れることができるが、時間指定が厳しくなると一時的な状態を示す形容詞だけが現れる。

Tom was tall.
*Tom was tall yesterday. (yesterday という時間指定があるので、tall のような永続的な性質を持つ語は使えない)
My father was alive.
My father was alive yesterday. (alive  は一時的な性質の語であるので、時間指定を示す語と一緒に使うことができる)

永続的な状態や性質を表す形容詞と一時的な状態や性質を表す形容詞

永続的な状態や性質を表す形容詞と一時的な状態や性質を表す形容詞の2種類がある。

tall, heavy, old という形容詞は永続的な状態や性質を表す語である。それに対して、polite, silent などは一時的な状態や性質を表す語である。

永続的な状態を示す語は名詞の前に置かれる。叙述用法でも使われるが、He is (a) tall (man). のように本来は限定用法として使われていたが、( )内が省略されて、He is tall. のように使われると考えることができる。

一時的な状態や性質を表す語は、叙述用法で使われることが多い。

限定用法/叙述用法と前置/後置

限定用法/叙述用法と前置修飾/後置修飾は、それぞれに共通性がある。

永続的な性質を持つ形容詞は名詞の前に来る(限定用法と前置修飾)。それに対して、一時的な状態や性質を表す形容詞は叙述用法で使われ、さらに名詞の後置修飾をすることが多い。the river navigable は the river (which is navigable) のような文の( )内が省略されたのであるとも考えられる。

現在分詞が使われる文を比較してみる。
(1) I found a sleeping beauty.
(2) I found a beauty which was sleeping on the sofa.
(3) I found a beauty sleeping on the sofa. 

この文では、(1)ではずっと長く眠っている「眠れる美女」を発見したというニュアンスだが、(2)(3)では、綺麗な人がたまたまソファで寝ていた、というニュアンスになる。

Jo-B / Pixabay

a-形容詞 (a-adjective)

asleep, afraid. alive alike, alone, awake は一時的な性質を示す語であるから、叙述用法である。 

He lives alone. (たまたま一人で住んでいたの意味である)
Leave me alone. (今だけ、一人にしておいてくれ、放っておいてくれの意味である)

*He is an alone man.  (alone は限定的な位置には来ないので非文となる。この様な意味の文を作りたいときは、他の形容詞を用いる。例えば、He is a lonely man. のようにする)