形容詞について

限定用法と叙述用法

形容詞の統語的な機能には大きく二つの用法が存在します。それは限定用法(attributive use)と叙述用法(predicative use)です。限定用法の形容詞は修飾する名詞の前におかれて名詞の永続的な性質を表します。
Susie is a pretty girl.
He is an old man.
She married a rich businessman.

叙述用法の形容詞は修飾する名詞の後ろにおかれて名詞の一時的な性質を表します。
This flower is beautiful.
She seems clever.
Whether he will resign is uncertain.
I found the book very interesting.
I consider what he did foolish.

指示修飾と指示物修飾

形容詞が名詞をどのように修飾するかという点での違いから、指示物修飾と指示修飾との二つの修飾の仕方があります。叙述用法の形容詞は指示物修飾(referent modification)として機能し、限定用法の形容詞は指示修飾(reference modification)として機能します。

指示物修飾とは、(a)や(c)のように、その人自体(その先生、その料理人)が悪い人かよい人かを述べています。指示修飾とは(b)や(d)のように、人物そのものではなくて、教師としての力量、料理人としての腕前が、良いか悪いかを論じています。このように形容詞でも、限定用法と叙述用法では、修飾の方向が異なります。

(a) The teacher is bad. (その先生は悪い人だ→指示物修飾)
(b) He is a bad teacher. (彼は先生としての教え方は下手だ→指示修飾)
(c) The cook is good. (その料理人は良い人だ→指示物修飾)
(d) He is a good cook. (彼の料理人としては腕が良い→指示修飾)

前置修飾と後置修飾

限定用法とは名詞を修飾するものであり、前方から修飾する前位用法(prepositive use)と、後方から修飾する後位用法(postpositive use)があります。

A lying dog looks very cute.
A dog lying on the sofa looks very cute.

これらの二つの文を比較するならば、後置修飾のlying on the sofaのほうが明らかに詳しく述べてあって、情報の価値が高いのです。情報の価値の高いものは後ろへと置かれるのが英語の特質です。これは、また頭が重いとバランスが悪いので後置されると考えてもよいでしょう。

永続的な性質と一時的な性質

前に来る場合は、永続的な性質であり、a kind teacher(もともと親切な先生)であり、後ろに来る場合は、a teacher kind only to girls([少女に対するという]特定な場合にのみ親切な先生)となります。同様に、the late teacher(亡くなった先生→なくなった状態は永続的に続く)とthe teacher late for the meeting(遅刻した先生→遅刻したのはその会議の時だけ)のように、使い分けが行われます。
Please give me something hot. のように不定代名詞には形容詞が後置されます。不定代名詞には永続的な意味を持たせることはできません。

永続的な性質は、すでに知られていることが多いので、旧情報になります。一方、一時的な性質とは、一時的ゆえに、人に知られることは少なくて、新情報になります。旧情報と新情報の関係からも永続的な性質の語句が前にきて、一時的な性質の語句が後ろに来ることが説明できます。

a lost dog(迷い犬)とは言えますが、*a found dogとは言えません。名詞の前に置かれると永続的な意味を表しますが、lostは永続的な意味があります。それに対して、foundは「見つけられる」と一瞬のことなので、名詞の前には置けません。a dog found by himのように使うのです(中川、1997:77)。

 

名詞句の後置修飾の移動

名詞句の後置修飾は後方移動することがあります。
The time to decorate the house for Christmas had come.(クリスマスに家を飾るときが来ました)
The time had come to decorate the house for Christmas.

通常の語順では、直接目的語は補語の前に来ます。しかし、目的語が長ければ、終わりに移されます。これも情報量の多い語は文末に下げられると考えることもできます。
He has proved them wrong.(彼はそれらが間違っていることを証明した)
He has proved wrong the forecasts made by economic experts. (彼は経済専門家による予想が間違っていることを証明した)

段階的と非段階的

段階性をもつ形容詞はveryなどのように度合いを示す副詞で修飾できます。しかし、singleやmarriedのような形容詞は段階性がないので、度合いを示す副詞では修飾できないし、また比較級や最上級になることはできません。

very young(とても若い)、so plain(そんなにも明白)、extremely useful(極端に有益)
*very metal, *so wooden, *extremely optical

Our house is bigger than yours.
*Tom is more single than John.
Mary is the most intelligent of the three girls.
*Taro is the most married man I know.

形容詞の配列(等位構造と累積構造)

形容詞の配列には統語的に二つの構造が存在します。等位構造と累積構造であり、前者は、同じ範疇に属する形容詞どうしが接続詞で連結されて配列される場合ですが、後者は異なる範疇の形容詞が接続詞をはさまないでそのまま連結されてゆく場合です。

This chair is red, black and green. (この椅子は赤と黒と緑が混じった色だ→等位構造)
This chair is red wooden old.(この椅子は赤くて木製で古い→累積構造)

3つの大きな分類

斉藤他(1984)では、形容詞の累積構造の配列について、三通りの大きな分類を試みています。それは限定的な形容詞は必ず限定詞→形容詞→名詞との配列つまり 限定詞と名詞との間に置かれるという点に注目しています。形容詞の中にはおもに先行する限定詞に引っ張られてゆくもの(形容詞Ⅰ)、後続する名詞に引っ張られてゆくもの(形容詞Ⅲ)、どちらの影響も比較的に受けない中間的なもの(形容詞Ⅱ)とに分類できるとしています。

形容詞Ⅰは限定詞に近い性質を持ち、certain, particular, different, same, sole, chief, latter, utter, mere, trueなどの形容詞が該当します。形容詞が並ぶときは前の方に置かれます。

形容詞Ⅲは、名詞と結びつきが強く、名詞に近い位置に置かれます。social, political, wooden, silken, Japanese, dental, culturalなどの形容詞です。形容詞Ⅱはこれらの中間的な性格を持っている語で、いわゆる普通の形容詞です。これらの普通の形容詞もいくつかに分類できますが、それらは、評価(判断)、大小、形状、年齢(新旧)、色彩の順に配列されるとのことです。それによれば、例えば、次のような順番になります。

pretty→ long→ round→ young→ red
useful→ large→ square→ new→ green

そして、実際の場面では次のように配列されます。
a tall young man(背の高い若い男)
an interesting new book(興味深い新しい本)
comfortable red chair(ゆったりとした赤い椅子)

限定詞とは

限定詞とは冠詞(the, a)、指示詞(this, that, those)、疑問詞(what, why)、否定詞(no)、数量詞(many, much, few)などの名詞を修飾する語で形容詞の前に置かれます。