スポンサーリンク

4つの用法

定冠詞 the はthis, these, that, those の軽い意味を持つ語です。this がはっきりと指し示すならば、the は「心の中で指し示すような」気持ちです。

定冠詞は、話し手と聞き手が対象とするものを互いに了解していることを示します。それらは文法的には、(1)前方照応の用法、(2)後方照応の用法、(3)外界照応の用法、(4)種族一般を示す用法に区分けすることができます。

まず、前方照応の用法ですが、それは何らかの意味ですでに述べられたものに言及するものです。つまり、前に一度その名詞を述べた場合です。

前方照応

(a) Hanako bought me some meat, but the meat was rotten. この文では、the meatはさかのぼって前にあるsome meatを言及します。

☛次の二つの文の違いですが、(1)では、the book は前方照応で前に出てくるa bookを示し、これは同一の本であることを示します。(2)では、後ろのa bookと前のa bookには照応関係はないので、異なる本であることになります。それぞれにa が使われれば相互関係はないことを示します。

(1) Susie ordered a book and the book has just arrived.
(2) Susie ordered a book and a book has just arrived.

後方照応

後方照応の用法とは、後ろにある語句によってその語が限定されていることを示します。(b) The water of the fountain was cold. (b)では、the water は次に来るthe fountain と関係する(限定される)ので定冠詞が付きます。「限定されるときは、the がつく」をご覧ください。

外界照応

外界照応とは外界にあって周囲の状況・発話の場面からそれと判るものを指す場合です。例文(c)では、聞き手の目の前の胡椒を示すので、すぐにどの胡椒か分かります。以下、家の召使いなので、直ぐに誰を指すか分かります。郵便局は近くにあるなじみの郵便局でしょう。door や window も具体的にどこか直ぐに分かるのです。
(c) Pass me the pepper, please.
(d) Where is the servant?
(e) He has gone to the post office.
(f) Someone is the door.
(g) Please open the window.

 

☛世界に唯一のものにはtheを付ける。
the world, the universe, the sky, the sun, the moon, the earth (なお、Jupiter, Mars, Venus などは固有名詞であるから、the はつかないで、大文字で書かれる)

☛世界を区分けして、限定して「その部分」は、との意味でtheを付ける。
空間 the east, the north, the west, the south
時間 the past, the present, the future
一日 in the morning, in the afternoon, in the evening, at night
左右 the left, the right
人々 the old/the young, the rich/the homeless/the dead/ the blind
楽器 the guitar, the piano, violin,
正誤 the wrong/ the right
真実 the truth – a lie (真実は一つだが、嘘はたくさんあるからa が付く)

種族一般

また、定冠詞theは種類一般を指します。下の例では、「犬一般は」という意味になります。

(h) The dog barks.

役職を示す時は無冠詞

役職を示す語が補語として使われたときは、その人ではなくて、その地位、役職という抽象的な内容を示しますので冠詞は付きません。
They elected him chairman. (彼らは彼を議長に選んだ。→議長という役職)
He was appointed principal of the school. (彼はその学校の校長に任命された。→ 校長という地位・役職)

☛無冠詞であると、その名詞は抽象性が高まる。
(1) John went there by bus.
(2) I did not go to school yesterday.
(3) John is in hospital now.
(4) They were at table then. (食事を取っているという意味)
(5) Man is mortal. (人を抽象化している、人間の存在)
(6) A man is known by the company he keeps. (具体的・個別の人を表す)

練習問題1

冠詞を入れなさい、ただし不要なばあいは×を入れなさい。
(1) (     ) egg that we bought yesterday was not good.
(2) I cannot go out because I have (     ) headache.
(3) I’m afraid you have (     ) wrong number.
(4) Mr. Kato was appointed (     ) president of our university.
(5) I want (     ) car, but I can’t afford to buy one.
(6) (     ) light and ( ) water are necessary to plants.
(7) He is not (     ) professional musician, but he plays (     ) violin very well.

地名とthe

地名の場合のtheはいろいろな事例があり、統一的な説明は難しいようです。一応の目安としていくつかの特徴が指摘されています。

①複数の要素をひとまとめにして複数形の固有名詞として表示しています。
the Netherlands, (オランダ)the Philippines(フィリピン), the Rockies(ロッキー山脈), the Hawaiian Islands(ハワイ諸島), the Nakamuras(中村家、中村夫妻 →a Nakamuraは中村家の一人、中村という人)

☛ theには、分散している要素を束ねる働きがあります。the 1970s, (1970年代) the Japanese citizens,

②省略を含む固有名で何かが省略されていることを示します。
the Pacific [Ocean](太平洋), the Thames [River](テームズ川), the Sahara [Desert](サハラ砂漠)なお、[   ]は、世間の常識で通用する名前の時は省略します。

③修飾語を含む固有名詞はtheをつけて固有名詞であることを示しています。
the Grand Canyon(グランドキャニオン), the Grand Hotel(グランドホテル), the Globe Theatre(グローブ劇場)

④その他いくつかの固有名詞にはtheがつきます。
the Suez Canal(スエズ運河), the Bronx(ブロンクス), the Ginza(銀座), the Golden Gate Bridge(金門橋)

⑤冠詞をつけない固有名詞もいろいろとあります。
France, London, German, Lake Michigan(ミシガン湖), King George V (= King George the fifth)(ジョージ五世), Pope John(法王ジョン)

⑥定冠詞が付くものと付かないものの2つの用法が共存する固有名詞があります。
America/ the United States of America (合衆国), Britain/ the United Kingdom(イギリス), Cambridge University/ the University of Cambridge(ケンブリッジ大学), Tokyo Bay/ the Bay of Tokyo(東京湾)

練習問題2

空所に適切な冠詞を入れよ
(1) Because I had (   ) heavy lunch, I cannot eat anything.
(2) What do you want to eat for (   ) lunch?
(3) (   ) president of the U.S.A. lives in (   ) White House.
(4) George Bush was elected (   ) president of the U.S.A.
(5) (   ) Civil War broke out in 1861.

冠詞の有無による意味内容の違い

名詞の意味は冠詞の有無によって異なります。ここでは、中川(2005:35-36)の説明を参考にしながら、pianoという語を例にみていきましょう。(a)のような質問に対しては、物体としてのピアノが答えとなるので(b)のようにaがつきます。(c)のような質問では、ピアノ一般を表すので(d)のようにtheがつくか、(e)のように複数形で示します。(f)のような質問に対しては、ピアノのレッスン、学科、ピアノ音楽のように抽象的概念なので、(g)のように無冠詞となります。

(a) Which do you like better in a living room, a piano or a sofa?(居間にはピアノが良いですかそれともソファですか)
(b) I like a piano. (私はピアノが好きです、単体としてのピアノ)
(c) What is your favorite musical instrument? (あなたの好きな楽器は何ですか)
(d) I like the piano.(私はピアノが好きです)
(e) I like pianos. (私はピアノが好きです)
(f) What is your favorite music? (あなたの好きな音楽は何ですか)
(g) I like piano. (私はピアノ音楽です)

 不定冠詞の特定性

不定冠詞a/anは特定のものを指さないと述べましたが、その場合でも、話し手か聞き手の一方だけはそのものを特定できる場合と、話し手と聞き手の双方ともそのものを特定できない場合です。以下、石田(2002:180-181)に従って見ていきましょう。
(a) I have an old guitar. (私は古いギターを持っている)
(b) I want a new guitar. (私は新しいギターをほしい)

(a)では、話し手はギターを特定することができますが、聞き手は特定できないので不定冠詞が付いています。(b)では、通常は話し手も聞き手も知らない「何か新しいギター」と考えるのが普通です。不確定性を示す動詞want, expect, look forなどの後に来る名詞に不定冠詞が付いているならば特定ではないと判断することが多いようです。

(c) When you saw a dog, were you frightened? (犬を見たときは、怖かったですか)
(d) When you see a dog, are you frightened? (犬を見たならば、怖いですか)

これは(c)では、過去形なので、聞き手には特定できるa dogのようです。(d)では、聞き手も話し手も特定できないa dogです。

(e) She is slicing a juicy mango. (彼女はみずみずしいマンゴを切っています)
(f) I like a juicy mango.(私はみずみずしいマンゴが好きです)

進行形である(e)では、特定できるa mangoを示します。しかし、一般的なことを述べている(f)では、どのマンゴかは特定できません。

冠詞と日本語の助詞

英語では冠詞を頻繁に使いますが、日本語には冠詞はありません。しかし、日本語では「は」や「が」などの助詞を用いて英語の冠詞に該当する内容を示しています。
(a) The man had lunch at eleven.
(b) A tall man came into the room.
(a)では、「その男11時に昼飯を食べた」と訳されますが、(b)は「一人の長身の男部屋に入ってきた」と訳されます。英語の冠詞の違いは、このように日本語の助詞による使い分けで示すことが出来ます。

なお、上の文ではthe manは旧情報で「は」という助詞を使いますが、下の文のa tall manは新情報であり「が」という助詞を使ってそのことを表します。旧情報と新情報に関しては後日説明をします。

→昔話の「が」と「は」の使い分けも同じです。昔々、おじいさんとおばあさん「が」いました。おじいさん「は」山に芝刈りに、おばあさん「は」川に洗濯に行きました。

最初は「が」ですが、二回目からは「は」となります。

スポンサーリンク