スペルの違い

イギリス英語とアメリカ英語ではスペルが異なる。日本人が英文を書く場合はどちらのスペルでもいいだろうが、ただし、両者を混合するのではなくて、どちらかに統一する方が望ましい。なお、Word などでデフォルトではアメリカ英語のスペルが組み込まれていて、イギリス英語のスペルを書くと、スペルミスとして赤い波線が現れる。

両者の違い

アメリカ英語ではそのスペルが短い点が特徴である。これはアメリカ人達が短いスペルを理想的であると考えたからではない。アメリカ人達が合理的と考えたスペルにしたがった所、結果的に短いスペルになったのである。

現在のアメリカ式のスペルはウエブスター(Noah Webster)の創案によるところが大きい。彼の考えるスペルの原理は、語源的な正確さと類推形によるスペルの簡易化ということである。
例えば、honor, labor, color などはラテン語のhonor, labor, color をもとにしたスペルである。center, meter などは number, chamber などの類推に基づいているスペルである。

イギリス英語では、defence, offence, pretence, licenceのようにスペルされる。しかし、これらの派生語は defensive, offensive, pretension, licensing (動詞はlicense とイギリスでもスペルされることが多い)のようにsが使われる。そのために、名詞の時もdefense, offense, pretense, license のように両者もsにした方が統一性が高まる。ウエブスターはそのように考えたのである。

イギリス英語では、connexion, inflextion であるが、アメリカ英語ではconnection, inflection である。これらは、affection などからの類推から選ばれたのである。しかし、inflexible, flexible などのような派生語との関係からは、inflextion のスペルの方が体系的であることになる。このように、すべてに合理的であるのは難しいようだ。

スペルの違いの例(左がイギリス英語、右がアメリカ英語)

-re, -er

centre, center
theatre, theater
metre, meter

our-, -or

neighbourhood, neighborhood
armour, armor
colour, color

-is-, -iz-

intellectualise, intellectualize
optimisation, optimization
civilisation, civilization
realise, realize

-yse, -yze

analyse, analyze
catalyse, catalyze
paralyse, paralyze

-ence, ense

defence, defense
licence, license

-que/-gue, -ck/g

cehque, check
catalogue, catalog

-l-, -ll-

skilful, skillful
instalment, installment
travelled, traveled

参考

安井稔『英語学概論』 開拓社 p.79-80

中西のりこ 『イギリス英語とアメリカ英語』コスモピア