音声学と音韻論

音声学(phonetics)は言語音の物理的側面に焦点をあてるのに対し、音韻論(phonology)では言語音の機能面に着目して抽象化をおこなう。つまり、音声学では、意味を排除していくが、音韻論は音声の持つ特徴と意味の間の関係を探る。

音声学

(1) 調音音声学articulatory phonetics:話者がいかにして言語音声を発するかを生理的に分析する。俗に言う発音法と考えられる。発音の仕方は観察が比較的容易であることから、この分野の研究は早くから発達した。現代の音声学は 19世紀末に学問分野として確立されるが、それは調音音声学として、確立されたのである。

(2) 音響音声学acoustic phonetics:言語音声を音波として物理的に分析する。聴き手の立場から音声を分析するのであり、いろいろな機器を使って調査・分類を行う。

bykst / Pixabay

(3) 聴覚音声学auditory phonetics:聞き手が音声音波をどのように聞き取るか心理的に分析する。この分野は 観察や測定が困難であることなどから、研究が立ち遅れており、 未知の部分が多い。

音韻論

(1) 音素論 phonemics: 意味の区別に役立つ言語音の最小単位である音素(phoneme)を設定して、その分類や結合の仕方などを研究して記述する。音節の構造、子音の結合、音の結合、音の脱落、音の同化、強勢(アクセント)、音調(イントネーション)などを研究する。

(2) 生成音韻論 generative phonology: 音声を素性(feature)の束と考え、意味と素性との相互関係を明らかにする。例えば、閉鎖音である/p/と/b/の違いは無声か有声の違いになる。このように同一の要素、異なる要素をそれぞれ抽出して、音声を特徴付ける素性を弁別的素性(distinctive feature)と呼ぶ。