2016-01-18
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So do I. と So I do.
情報構造では、文末に焦点が当たる(=一番情報としての価値が高い)のです。He likes baseball. という発話を受けて、So do I. と答えたときは、文末の I が焦点となるので、「私もそうです」という意味になります。So he does.と答えたときは、文末のdoes (=likes)に焦点があたります。つまり、likeの意味が強調されて、「本当にそうです」の意味になります。
He doesn’t like baseball.の場合ですが、Neither do I. と答えると、文末の I の「私」が強調されて、「私も嫌いです」の意味になります。もしも、*Neither he does.と答えると、doesが強調されますが、これは肯定の意味ですので、矛盾しておかしくなります。ですので、Neitherを用いて、「たしかに嫌い」という意味の文をつくることはできません。
Come downの倒置
Down came the rain.という文の情報構造はどうでしょうか。この文は倒置されているのですが、もともとの文であるThe rain came down. (雨が降っていた) は、情報構造の上ではあまり意味はないのです。それは、雨は下に降ってくるのは当たり前で、文末焦点にdownがきていますが、それ自体には新情報がないとも言えます。
それに対して、Down came the rain.(降ってきたのは雨だった)では、rainが文末焦点にくるので、降ってきたのは雪ではなくて雨である、というニュアンスが生まれて情報としての価値があります。
倒置と情報構造
倒置とは、情報構造にあうように文を整えることです。
(a) What was on the shelf?
(b) On the shelf was a vase full of roses.
(c) A vase full of roses was on the shelf.
(a)に対する答えとしては、倒置されている(b)が自然となり、(c)はやや不自然な印象を与えます。つまり、(b)はずばり答えそのものである a vase full of roses を焦点である文末に置いているのです。しかし、(c)は答えではないon the shelfに焦点があうことになるので不自然となります。
このように、焦点を受ける語を文末に持っていくために倒置が行われた例を見ていきましょう。
(d) Addressing the demonstrations was a quite elderly woman.(デモ隊に演説していたのは、とても年老いた婦人だった)
(e) Especially remarkable was her oval face.(とりわけ目立ったのは彼女の卵型の顔だった)
(f) Faint grew the sound of the bell.(ベルの音が消えていった)
(g) In a distant grave lies his beloved body. (遠くの墓に愛しい彼の肉体は眠る)
(h) Into the stifling smoke plunged the desperate mother.(息ができないような煙の中に飛び込んでいったのは絶望的になったその母親だった)
(i) Into the stifling smoke she plunged.(息ができないような煙の中に彼女は飛び込んでいった)
なお、(i)では、she plunged という形でplunged she とはなっていません。どうしてでしょうか。それは、sheという代名詞は新情報にはなりづらく文末にくるのは不自然になるからです。その点で名詞(the desperate mother)が使われる(h)の plunged the desperate mother と比較してください。
倒置とは、前の文との関係で、次の文の情報構造が自然であるようにするために行われるのです。次の文を見てください。(j)では、台所に行くと、stool(丸いす)があるのが普通ですので、on a stool (旧情報)→a large book(新情報)という流れになり、情報構造に合致します。ところが、(k)では、an overcoatは台所とは普通は無関係です。ですので、overcoatも新情報となり、旧→新という構造を作り出せないので不自然な文となります。
(j) I walked into the kitchen. On a stool was a large book.(台所にあるいていった。丸椅子の上には大きな本があった)
(k) I walked into the kitchen. *On an overcoat was a large book.
副詞句を先頭に持ってくる場合の倒置
(a) I went out for a walk in the morning. (散歩は朝したのです)
(b) In the morning I went out for a walk. (朝は散歩をしていたのです)
焦点がどのように当たっているかという点ですが、(a)はin the morningに焦点を合わせているのですから、(c)の答えであり、(b)は、for a walkに焦点を合わせているのですから、(d)の答えになります。
(c) When did you go out for a walk? (いつ散歩をしたのですか)
(d) What did you do in the morning? (朝は何をしていたのですか)
なお、この二つの文ですが、通常は、副詞句が後ろに来る(a)が一般的であり、(b)は特殊な意図を持った文ということになります。
not only, besides, in additon to の使われる構文
(a) He can speak not only English but also French.
(b) He can speak French as well as English.
(c) He can speak both English and French.
(d) Besides English, he can speak French.
(e) In addition to English, he can speak French.
(a)では、彼の言語能力に関して述べていますが、Englishを話せるということが旧情報で、Frenchを話せるということは新情報です。つまり、Frenchも話せるという点を強調しているのです。ただし、(b)では、前の方にあるFrenchが新情報です。また、(c)のbothではEnglishとFrenchの両方ともが新情報となります。in addition toやbesidesは旧情報に結びつき、文の先頭に来ることが多いのです。ですので(d)と(e)では、Englishが旧情報となります。
(参考、中川『英文法が分からない』 研究社 2006:173)