2015-08-02
「文章の書き方が上手になるにはどうしたらいいでしょうか。それは毎日こつこつと10分でもいいですから頑張って書いていくことが文章上達の『王道』です」
こんな文章を見たら、みなさんはどう感じられますか。特に問題はないと感じられるでしょうか。私はこのような文章を原稿に書いたことがありました。そしたら、出版社の編集担当の方が、王道という言葉の使い方が間違えていると指摘してくれました。そう、王道とは「安易な道、近道」という意味なのです。
英語のことわざに下のような文があります。
There is no royal road to learning.
There is no royal road to knowledge.
訳は「学問に王道なし」です。元来は、There is no royal road to geometry.(幾何学に王道なし)という言葉から生まれたようです。数学者ユークリッドがプトレマイオス王に幾何学を教えていた時に言ったそうです。王はなかなか幾何学が分からないので、もっと早く分かる方法はないか尋ねたら、ユークリッドは王道(近道)はありませんよ、とこの言葉を発したそうです。そして、この表現が次第に幾何学だけでなく学問全体に対して使われるようになりました。
最近の文章、特にネットでの文章を読むと王道とは「正しい道、正攻法」というようなニュアンスで書かれているものが多いです。どちらにするか迷いますね。
結論としては、日本語の文では「王道」という言葉を使わない方がいい。逆の意味に解釈する人が多いから、ということになるでしょう。
(補足)
ネットで色々見てみると「王道」とは「地味だけど着実な道、正攻法」の意味で使われるのがほとんでした。よって、誤用が正用になった例として取り上げてもいいでしょう。ところで友人の持っている本ですが、こんな本があったので画像をアップします。帯のところを見てください。「英語学習の王道」という表現が使ってありますね。「王道」は「正攻法」という意味で使われています。でも、この著者の人、学生から「 There is no royal road to knowledge. はどう訳しますか」と尋ねられたらどう答えるのでしょうか。(もっとも、帯は出版社が勝手につけることがありますし、著者が知らないこともあります)