仮定法

直説法と仮定法

英語ではあることを事実として述べる直説法(Indicative Mood)と心の中の想定(空想として)を述べる仮定法(Subjunctive Mood)があります。

仮定法の公式

ここでは、仮定法の使い方を練習しましょう。ifを用いた文ですが、まずその公式を覚えましょう。

従節 と主節の関係

仮定法過去→現在の事実に反する仮定 If+主語+過去形 主語+would+動詞の原形 仮定法
仮定法過去完了→過去の事実に反する仮定 If+主語+過去完了形 主語+would+have+動詞の過去分詞 仮定法
仮定法未来→未来のことを「万一~ならば」という心持ちで述べる時 If+主語+should (were to) +動詞 主語+would+動詞の原形 仮定法

条件文→現在・未来に、あり得ることが起こったときの話 If+主語+動詞の現在形 主語+will+動詞の原形
直説法

仮定法過去

現在の事実に反する仮定を表す文では、動詞の過去形を使い、その公式は、「If…助動詞の過去形…, …would, should, couldなど+原形動詞」となります。
(1) If he were here, we could begin the meeting.
(2) We might move to a bigger house, if we had more money.
(3) I don’t like this place. I wish I were back home.

仮定法の過去完了

過去の事実に反対の仮定として仮定法の過去完了を用います。その公式は、「If…動詞の過去完了形…, …would, should, couldなど+完了形」となります。
(4) He would have lost his life if the operation hadn’t been successful.
(5) If we hadn’t spent so much time in Kyoto, we could have gone to Nara.
(6) I wish I hadn’t said that.
(7) If only we had thought of it before.

If only we had thought of it before. → If only はWe wishと置き換えられる。

練習問題1

次の文を英語に直しましょう。
(1) あの時にお金があれば、車を買っただろう。
(2) 今お金があれば、車を買うだろう。
(3) あのときに、次郎が助けてくれれば、私は成功していただろう。
(4) 今、次郎が助けてくれれば、私は成功するだろう。

丁寧な言い方

仮定法過去は事柄を仮定の問題として述べるために、人にものを頼んだり都合を尋ねたりするときに、押しつけがましい感じがしなくて丁寧な言い方になります。
(8) It would be nice if you helped me water the flower beds.
(9) Would it be all right if I came again tomorrow?

次のような表現ですと丁寧な気持ちが薄まります。
(8’) It will be nice if you help me water the flower beds.
(9’) Will it be all right if I come again tomorrow?

なぜ仮定法や丁寧な言い方では過去形を使うのか

過去形は一般に現在形と比べて遠さを表します。現実からの遠さを示すことから、仮定法に使われます。また相手からの関係の遠さを示すことから控えめ・丁寧さを表します。別の言い方をすれば、「仮想のことである」ことを示すために、時制をずらしているのです。
人間は過去のことには記憶が薄れて曖昧になります。これを写真にたとえるならば軟調(光が弱く影も出ていないソフトな描写)になります。過去形で控えめ・丁寧さを表すというのはこのことに関連があります。

日本語では丁寧な言い方とは「~です、ます体」を使うことです。英語では仮定の言い方をすることです。もちろん、日本語でも仮定の言い方は丁寧な言い方になります。
Would you like a coffee?
Would you mind opening the window?
I would like to buy your book.

It’s time~ の構文の時制

It’s time~「~する時間である」を意味する慣用句です。現在の事柄を示しますが、時制は仮定法で過去形を使います。つまり、「~する時間だろう」というニュアンスです。
Look at the clock; it’s time you went to bed. (時計を見てごらん、もう寝る時間だよ。→仮定法であり、「もう寝ていたであろう時間である」という意味になります)
It’s about time Taro was getting ready for school.(太郎が学校の準備をする時間です)
With your exam only a week ahead, it’s high time you began to study in earnest.(試験がわずか一週間後なので、君は真剣に勉強に取り組むときだよ)

as if (as though)と直説法現在

昔から受験参考書などでは、as ifの次に来るのは仮定法であると繰り返し教えられてきましたが、現在では、徐々に、とりわけ口語では直説法が用いられるのが増えてきました。また、wereの代わりにwasが用いられることが増えてきています。
(10) It looks as if he were (was) afraid of something.
上の言い方は彼は何かを恐れているかまだ確信が取れない言い方ですが、
(11) It looks as if he is afraid of something.
(12) He is probably afraid of something. (11)と(12)はある程度確信を持った言い方です。
were → was → is の順番で話し手の確信が強まっていく

wereが使われるのは、慣用的な表現で、次のような例に限られてきます。He is, as it were, a walking dictionary.(彼はいわば、生き字引です)のように使われます。(as it were はas if it were soが短縮)

なお、as ifはas thoughという形で使われますが、後者のほうがより文語的です。as ifはas thoughよりもはるかに用例が多いといわれています。統計では3倍ほど多い。

to不定詞、前置詞、接続詞を用いて仮定法を表す場合

仮定を表す副詞節の代わりに、to不定詞、前置詞、接続詞を用いて同じ意味を表す場合があります。次の例文を見ていきましょう。下線部が仮定の意味を表します。
How happy I should be to receive your invitation. (=if I were to receive your invitation) (あなたから招待を受けたらどんなに幸せなことでしょうか)
Without water, nothing could live. (=If there were no water) (もしも水がなくなれば、何者も生きていけないでしょう)
But for his drunkenness, he would be a good husband. (=If it were not for) (酒を飲まなければ、彼は良い旦那さんなのだが)
He worked very hard; otherwise he would have failed. (=if he had not worked hard) (彼は一生懸命働いた。そうでなければ、彼は失敗していただろう)

☛以下の文では、a wise manという主語名詞句は縮約された条件節を含んだ形になっています。
A wise man would not do such a thing. (=A man would not do such a thing if he were wise.) 賢い人間ならば、そのようなことをしなかっただろう。

仮定法と直説法

仮定法とは、ありもしないことを仮定しています。例えば「空からお金が降ってくるとか」、「私が鳥になれたら」ということです。それに対して直説法は下の例文のように事実を述べているのです。
I want to be with you. As I am not a bird, I cannot fly to you. (あなたと一緒にいたい。私は鳥ではないので、貴方のところには、飛んでいけない)
これは直説法です。これは事実をありのままに述べる方法です。これに対して次の文は事実に反する仮定です。過去形を使って(仮定法過去によって)、事実に反することを想定しています。
I wish I were with you.(貴方と一緒におれれば)
If I were a bird, I could fly to you.(もしも鳥ならば、貴方のところに飛んでいけるでしょう)

直説法の条件文

直説法でifを用いる用法(条件文)は仮定法とは異なるニュアンスがあります。条件文は、実現可能性の高いこと、例えば、明日晴れだったらとか、今度生まれてくる子供が男の子だったらと条件を想定する場合です。逆に言えば、話し手が仮定法を使ったならば、可能性が低いと判断しているようで、条件文を使ってくるならば、可能性が高いと判断していると考えられます。

(a) If it rains tomorrow, I will not go on a picnic.(明日雨ならば、ピクニックには行きません)
(b) If it should storm tomorrow, I would go on a picnic.(明日たとえ嵐でも、ピクニックに行きます→嵐の可能性は少ないが、たとえとして嵐を挙げている)
(a)は、When it rains tomorrow, I will not go on a picnic.と同じような意味になります。

単なる条件と仮定の条件

What will you do if this building catches fire? (このビルから出火したらどうする)
What would you do if this building caught fire?(万一このビルから出火したらどうする)
条件文で書かれた文では火事の可能性はかなり高いと考えていますが、仮定法の文では、「まず火事の可能性はないと思うが、万一あった場合はどうするか」という意味になります。