言語の3類型(孤立語・膠着語・屈折語)
言語にはいくつかの種類があるが、大きく分けて3つの類型である。単語相互の文法関係をどのように示すかによって、孤立語、膠着語、屈折語に分けられる。たあ、純粋に孤立語、膠着語、屈折語であることは少なくて、各要素が混在していることが多い。
ドイツの言語学者ブンボルトがこの三分類を提唱した。彼は世界の言語は孤立語→膠着語→屈折語の順に高度化すると考えた。この分類法は当時の西洋優位の考えに影響されている。
孤立語(こりつご)
孤立語 (isolating language) は、分析言語(analytic language)とも呼ばれる。分析言語では、さまざまな文法範疇を語形変化ではなく文脈・語順や接置詞などの機能語によって表現し、結果的に1つの語は少数の形態素から構成されることになる。
孤立語は語順が非常に重要である。語形変化や文法的な機能を担う接辞があまり存在しないため、語順に頼らざるを得ない。また語形変化がないため、基本的に時間的な判断(過去・現在・未来)などは、文脈や「明日」「昨日」などの副詞で判断されることになる。
中国語は代表的な孤立語であり分析的言語であるが、現代中国語では複合語が多数存在し助辞も頻繁に用いられるので、古代中国語にくらべると分析的性格がやや弱くなっている。北方の膠着語(つまりモンゴル語や満州語など)の影響を強く受けており、今では膠着語的な側面も持っている。
膠着語(こうちゃくご)
日本語は膠着語(agglutinative language)である。ある単語に接頭辞や接尾辞のような形態素を付着させることで、その単語の文の中での文法関係を示す。
「飛ぶ」という動詞だと
tob という語幹に、
tob anai:「飛ばない」
tob imasu:「飛びます」
tob eba:「飛べば」
tob ô:「飛ぼう」(発音はトボー)
のように語尾を付着させて変化させる。 このように日本語における膠着語とは、語幹に語尾をいろいろ変化させて付着させていく言葉をいう。
名詞に助詞が接続してその単語の文法関係を示す。日本語の格助詞(格を示す助詞)には「が、の、を、に、へ、と、から、より、で」がある。例えば、格助詞「に」には、~に到着するというイメージがある。そして、①存在の場所・時点、②一方向性を持った動きの着点、③被動的行為の動作主、の3つの用法がある。その他には、格助詞「を」は動作の直接的な対象や知覚・思考活動の対象、移動時の経路を示す。日本語では助詞が接続するのであるが、これは膠着語としての特質と考えるよりも、前置詞や後置詞と考えて、分析言語の特徴であると考える説もある。
屈折語(くっせつご)
文中の語がその他の語との文法上の関係を示すのに、語形を変化させることによって、表現する言語である。英語は屈折語 (inflected language) に分類される。ヨーロッパ言語の多くがこれに分類される。ただし、実際には膠着語・孤立語などの特徴を併せ持っている。
屈折語における語形変化は大きく次の二つに分類される
ディクレンション(declension) とは名詞および形容詞の変化である。格に応じた変化に代表されるので、「格変化」と訳されることが多い。I, my, me, mine
コンジュゲーション(conjugation) とは主語の人称と数、に合わせた動詞の変化である。「活用」や「屈折」と訳される。am, is, are, was, were do, did, done
英語ではインド・ヨーロッパ語族の特徴である動詞の屈折語尾はほとんど失われ、現在単数三人称に‐sがつくのみ、名詞では格の区別が語の上から失われ、所有を表す ‘s を伴う形の二つだけになっている。このような屈折性の減少を補うため、英語では、前置詞等により格を表現したり、語順を固定したりしている。英語は屈折語から孤立語へと変化してゆく段階で、格変化を失って語順が定着していったのである。
抱合語
これら以外に抱合語という概念が提唱されることがある。これは一つの単語(主に動詞)に目的語やら副詞やら代名詞やら様々な意味を持つ接辞が次々とくっつき、全体としては長い一単語なのに、まるで一つの文であるかのような働きを生み出すタイプの言語である。まさに一つの単語がいろんな要素を「抱き合わせている」のであるから膠着語との境があいまいになりがちである。