私は情報構造に関心があって、このブログでもしばしば論じている。結局は、旧情報から新情報と語順は配列される。情報量が大きいものが後ろに配列される可能性が高いということだ。英語は語順がかなり決まっているので、その範囲の中で、新情報を後ろに持ってこようとしている。ドイツ語は語順にあまり影響されないので、言いたい箇所を後ろに持ってゆくという、情報理論がより一層貫徹しそうである。

福田幸夫『ドイツ語は英語とどう違うか』郁文堂1972 を読んでいたので、面白そうなところを紹介したい。

p.39 では、「情報価値の大きい成分ほど文末に近づく、具体的に言うと定冠詞類のついた名詞は既知のものであるから、不定冠詞のついた名詞(未知のもの)より情報価値は小さいわけであり、人称代名詞はさらにそれより小さい。その結果、次のような語順になる。

Er hat mir um Geburtstag ein Buch geschenkt.
Er hat mir das Buch zum Geburtstag geschenkt.
Er hat es mir zum Geburtstag geschenkt.

p.40にかけては、次のように語っている。「また、同じ成分の場合でも、情報価値の大小によって、次のように語順が変わりうる。(文末に近い成分ほど情報価値が大である。「私からの補足:強調したい部分ほど文末にゆく」)

Der Lehrer reichte dem Schüler das Buch mit einem freundlichen Lächeln. (怒った顔ではなくて、ニコニコして)
Der Lehrer reichte dem Schüler mit einem freundlichen Lächeln das Buch. (ノートではなくて、その本を)
Der Lehrer reichte  das Buch mit einem freundlichen Lächeln dem Schüler. (その生徒に対して)