英語では複数形は一般に -s をつけるのだが、少数の例外として、child/children, brother/brethren, foot/feet, tooth/teeth, man/men, woman/women, mouse/mice などがある。
これらは単数と複数の時では母音の音が異なる。child/children やbrother/brethren (同胞)では、母音の音が異なるだけでなくて、複数形では語尾に -en が付く。これなどは、ox/oxen と同じである。
話が変わるが、ドイツ語では、複数形にする時に母音がウムラウト化(a→ä、o→ö、u→ü)する語がある。
Vater ファーター 父 →Väter フェーター
Tochter トホター 娘 →Töchter テヒター
Hand ハント 手 → Hände ヘンデ
さらには、 -en をつけて複数形を表す語もある。
Arbeit アルバイト 仕事 →Arbeiten アルバイテン
Staat シュタート 国家 →Staaten シュターテン
このあたり、英語とドイツ語は似ている面があり、英語とドイツ語が同系列の言語であることを示している。
なお、フランス語では語中の母音が変化して複数形を示す例はない。ほとんどが -s を付けるだけである。しかし、フランス語では末尾の子音は発音しないことが普通なので、会話では同じ音として聞こえる。複数であることを示すのは、les のような冠詞に頼るのだ。
日本語で数字を示すのは、「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やー、ここのつ、とう」である。
hi の2倍でhu、 mi の2倍でmu、yoの2倍でya、(i)tuの2倍でto 、である。これらは小さい数字の倍数を示すのに、母音の部分を変えて示したという説がある。この説が当たっているとしたら、母音を変えて複数を示すという法則が言語には存在することを強く示していると言えるであろう。
子音が同じであれば、母音が変わっても同じ言語であるという意識は残る。先般、自分は、Who Moved My Cheese? という話を音声で聴いていた。その中で、mouse, mice という語が頻繁にで出てくる。自分が気づいた点は、耳で聴いても mouse/mice は同じ語の単数形と複数形であるということがすぐに分かることだ。つまり同種の語であることがすぐに分かるのだ。子音にはそれだけ意味を示す力が強いようだ。子音が同じならば、容易に同じ語であると推測できる。
英語の文章だが、母音を全部取り除いて子音だけ残して元の文を推測させる方が、子音を全部取り除いて母音だけから元の文を推測させるよりもはるかにやさしい。やはり、子音の方が意味を示す力が母音よりも強いようだ。