接頭辞の com- は「共に、一緒に」という意味である。そのあとにどのような語が続くかによって、com- の形が若干変わっていく。m, p, b の前では、com- であるが、l の前では、col となり、母音や,h, gn の前では、co- となり、そのほかの前では、con- となる。

m の音は、唇を閉じる両唇音である。communication のように m の両唇音が続く場合は、そのままの両唇音であることが望ましい。さらには、p, b はやはり両唇音であるので、computer, combine のように、唇を閉じる動作が持続する意味からもm の音であることが望ましい。

なお、日本語で「日本橋」「新聞」「てんぷら」は、Nihonbashi, Sinbun, Tenpura であるが、音の連続ということを考えると、Nihombashi, Simbun, Tempura と無意識のうちに発音しているので、mb, mp のようにスペルすることが音の実態に合っている。ヤンマーディーゼルという会社の英語のスペルは Yanmar Diesel  となっているが、Yammar Diesel とした方が実際の音に合っているだろう。

ミャンマーという国があるが、これはMyanmar とのスペルだ。読み方は、ミャンと一息ついてからマーと発音するのだ。よってこの場合は音の連続は考慮しなくてよい。ミヤマーという発音ならば、Myammar というスペルがいいことになる。

com- であるが、l の前では、col となる。l の音は、有音歯茎音で側音といわれる。舌の先端が歯茎の中央に接触して閉鎖を形成して、呼音は舌の両側から流れ出る。com+lect となると、両唇を閉じて、次の瞬間に開けて唇を歯茎の部分につけるという動作は面倒くさい。やはり、collect のように唇は開けたままで次の動作に移る方が便利である。

母音を発声するときは口が開いている。co- とあって、さらに次に母音が続くときは、途中でわざわざ唇を閉じるm の音を発するのはやはり不都合だ。

h の音は大きく息を出す。gn は口蓋で閉鎖を作るのだが、そのときは唇はあいてしまう。よってco- の後はm- 音は挟まないで、そのまま続く方が好都合である。cohort, cooperate, cognitive, recognize などがその例である。

そのほかの音のときは、con- になるのだが、n音は唇はあいており、舌先と歯茎で閉鎖が行われる。この位置ならば、次の音への移動が比較的に楽になる。convenient, control, constant, conduct, conference などのように摩擦音や口を開ける閉鎖音が来た場合には、con- という形が都合がよい。

なお、comfort は例外的にf音にcom- がついている。これは他の単語、confess, confirm, confront, confuse などのようにcon- + f 音が自然なのである。 

ちなみに、フランス語では、confort, confortable である。 

photo credit: Gwendal_ Wide Mouth V2 via photopin (license)
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