2016-02-28
「受験英語は役に立たない」「英語教員は日本人ではだめで全員ネイティブスピーカーにすればいい」などという提案を聞く。どうすれば日本人の英語力が伸びるかは多くの人が頭を悩ましている。「小さい時から英語の音声をただ聞かせればネイティブのように英語がペラペラになる」という人もいる。どれが真実か。
まず、英語で何を目指すかでその方法が異なってくる。観光旅行が目的の場合がある。アメリカに行って、ホテルに泊まり、買い物をして、道を聞き、人に挨拶をすることが目的ならば、受験勉強をする必要はない。必要なフレーズを覚えてCDを聞いてその音の出し方を何回も練習すればいい。ネイティブの先生に教われば発音もよくなるだろう。
しかし、英語の本を読み、ある程度の難しい内容を討議して、中身のある文を書いていくには、英文法を主体とした受験英語は必要である。受験英語がその場合は基本である。それをきちんと押さえれば、現地に半年ほど留学すれば、英会話はすぐに上達する。
受験英語を知らないで留学した人は何年たっても会話力はある一定のレベルでストップする。ところが、受験英語を知って留学したならば、しばらくすると現地の人と専門的な会話をすることができるようになる。
I was asked to hand over this document to Mr. Yamada who I had met at the party which was held in the previous year. この文章は「前年のパーティであったことがある山田氏にこの書類を渡すように頼まれた」という意味だが、ネイティブに何年習ってもこんな言い回しはできるようにはならない。簡単な文なのだが、受け身とか、時制の一致とか、関係代名詞などの使い方を知らないと作れない。
ネイティブと話をすることで、たしかに、単文や重文は作れるようになるだろうが、複文は作れないだろう。どうしても文法の知識を援用しないと複雑な言い方、複文はできない。
学校で学ぶ英語の時間を1000時間だとすると、それを英会話の練習に全部当てても、旅行や簡単な挨拶はできるようになるが、それまでである。さらに1000時間やそれ以上を費やしても伸びない。条件反射的にフレーズを述べる速度や流暢さは高まるが、それだけである。
ところが、1000時間をたっぷりと文法に費やしたならば、文法構造が頭に入る。そして次に1000時間を会話に費やせば、その力は飛躍的に伸びる。専門的な議論もできるようになる。
であるから、学校では基本文法を覚えて(文法は教員に聞いたり練習問題を解いて訓練することで身につく)、あとはYouTubeなどを利用して自分で音声を聞くことが一番効率的だと言いたい。学校で文法を、自宅や通勤途上で音声を聞く、ことが一番だろう。
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