英語にチャレンジする

新情報と旧情報(語の配列について)

新情報と旧情報(語の配列について)

英語という言語の特徴

言語とは語が配列されて文をつくります。英語やフランス語は語の配列で格を表す言語ですが、ドイツ語は冠詞で格を示しますし、日本語は助詞で格を示します。ドイツ語や日本語はそのために比較的に自由に語順が選べますが、英語では語を自由に配列することはできません。
(1) 太郎は、6時に、京都駅で、次郎と、会った。
(2) Taro met Jiro at Kyoto Station at six o’clock.

情報の伝達

話し手が聞き手に話すときは、情報が効果的に伝わるように文を配列しなければなりません。両者が共有している情報は旧情報(Old Information)と呼ばれ、話し手がそれに新しく付け加える情報は新情報(New Information)と呼ばれます。旧情報に新情報を付け加えながら話しを進めていくことになります。それは、話し手は聞き手は既に知っていると思われる情報(旧情報)をまず提示し、その後にまだ知らないと思われる新たな情報(新情報)を追加していくことで、情報を受け取る側は理解しやすくするためです。
旧情報は、Given InformationとかKnown Information、新情報はUnknown Informationと呼ばれることがあります。トピック―コメント、主題―焦点という区分けとも重なります。

文の内部の構成

発話された文の内部では、旧情報から新情報へと配列されています。つまり、英語の文の構成は、情報価値の低いもの(旧情報)から情報価値の高いもの(新情報)へと並んでいるのです。旧情報を表す部分は、前の文に出来るだけ近いところ、ふつうは主語のところに現れるのが最も自然です。それは、旧情報が前の文の内容を受けつぐものですから、前の文に近いほど聞き手の記憶の負担が軽くなり、会話の流れがよくなるからです。

下の例(a)(b)では、後ろに来る文は、Heを主語にする方が自然となります。(a)では、最初の文のThe famous actor を受けて、後ろの文は旧情報のHeから始まっています。しかし、(b)のように、後ろの文が、His fanから始まると、突然現れたような感じで、つまり新情報が先頭に現れたことで、最初の文とのつながりが切れて不自然な感じを与えます。
(a) The famous actor arrived in Tokyo this evening. He was immediately surrounded by his fans. (有名な俳優が今晩東京に到着した。彼はたちまちフアンに取り囲まれた)
(b) The famous actor arrived in Tokyo this evening. His fans immediately surrounded him. (有名な俳優が今晩東京に到着した。フアンはたちまちに彼を取り囲んだ)

旧情報・新情報の現れる位置

会話の実際の場面から情報構造を見ていきましょう。
(a) What did Taro do? (太郎はどうしたんだ)
(b) He broke his father’s vase. (彼は父の花瓶を壊したんだ)
(c) What happened? (何が起こったんだ)

(a)の質問は、Taroがどうしたかのかという質問です。答えとなる(b)では、Heが話題(旧情報)となり先頭に現れます。新情報はbroke his father’s vaseの部分です。そして、強く読まれるのは、新情報であるbroke his father’s vaseの部分です。ただし、(c)の問いかけをした場合でも、同じように答えは(b)となります。その場合は、He broke his father’s vase.という文全体が新情報と考えられます。新情報は文末に来ると述べましたが、文脈によっては、 (c)の質問の答えとなっている(b)のように、文全体が新情報になります。
(d) Where is your book? (君の本はどこだい)
(e) The book is on the desk. (本は机の上にあるよ)
この対話文ですが、(d)のyour bookを受けて、(e)では定冠詞が付いたthe bookが旧情報として文の先頭に来ます。the bookが「話題にする項目」、つまり「主題」(旧情報)となります。

旧情報である(b)のHeと(e)のThe bookの部分に、「~がどうした」という新情報が加わっています。加わった部分を「焦点」と呼びます。つまり、(b)では、文末にあるbroke his father’s vaseが、(e)ではon the deskが焦点となります。

練習問題

下線部が新情報(知りたい部分)になるように、対応する質問文を作りなさい。
(1) Taro has lived here for twenty years.
(2) My father did not come back yesterday because he had to go to Osaka.
(3) World War I came to an end on November 11th, 1918.
(4) My sister is majoring in biology in the university.
(5) Susie had an argument with Mary.

英語の語順

英語は語順が定まっている言語です。日本語のように語順が比較的自由である言語と比べるとその違いは一目瞭然です。日本語の、「太郎は、昨日、花子に、大きなプレゼントを、与えた」という文ですが、この文は動詞の「与えた」が文末に来る点を除いては、他はどのような語順でも可能です。しかし、英語では、Taro gave Hanako a big present yesterday.とだいたいの語順は決まっています。
新情報は文の最後に来るのが英語の特徴ですが、語順が元来決まっていることも英語の特徴です。この二つの特徴は矛盾します。しかし、英語は書き換えなどの操作で、できるだけ新情報を後ろに移動させようとします。英語は語順が決まっているという制限内で、新情報をできるだけ後ろに移動させようとしているのです。

日本語でも次の例文が示すように動詞の直前にある要素が重要である。それぞれが下線部の部分を聞いているのである(神尾 1998:153)。

(1) 太郎は、花子と京都へ行ったの?
(2) 太郎は、京都へ花子と行ったの?
このばあい、以下の例文を示す。文末へ「京都へ」、「花子へ」を持ってきてもやはり焦点は下線部で示された動詞の直前の部分である。
(3) 太郎は花子と行ったの、京都へ?
(4) 太郎は京都へ行ったの、花子と?

whenの副詞節の場合

一般には、次の2つの文は同じ意味だと考えられています。しかし、情報構造の上からすると意味に違いがあります。
(a) When Taro came in, Hanako stood up.(太郎が入ってきたとき、花子は立ち上がった)
(b) Hanako stood up when Taro came in.(花子が立ち上がったのは、太郎が入ってきたときだ)

(a)では、Hanako stood upの部分が新情報で、What did Hanako do when Taro came in?(太郎が入ってきたとき、花子はどうしたの)という疑問文の答えと考えられます。それに対して、(b)はwhen Taro came inが新情報で、When did Hanako stand up?(いつ花子は立ち上がったの)という疑問文の答えと考えられます。

分裂文(Cleft Sentence)

ある質問に対して、答えとなる部分は焦点を受けることになります。ただ、英文の構造上、焦点を受ける語を文末に持っていけないときは、分裂文(It強調構文)という形式で焦点を受けるようにすることが出来ます。
(a) Who gave you the book? (誰がその本を君にあげたの)
(b) Taro gave me the book. (太郎がその本を私にくれたのです)
(c) It was Taro who gave me the book. (その本を私にくれたのは、太郎です)
(a)の質問に対しては、(b)では答えの部分が先頭にきてしまいます。肝心の答えの部分が文の先頭に来て、情報の流れにはそぐわなくなります。その場合は、(c)のように分裂文の形式をとることで、先頭の位置から外すことができるのです。

旧情報の提示(話題化)

as for, speaking of , talking about, regarding というような語句は、何かが話題となっていることを示します。文頭にきて(話題化して)、情報の流れを旧→新という流れにします。
(d) Regarding the new employee, I think he is very lazy.
(e) Speaking of food, did you like that restaurant you went to last night?
(f) Talking about students, do you know where Tom is?

重要な情報は一番うしろに

次の例ですが、最後の文では、本来は…, he saw a gun on the desk.とすべきですが、一番肝心なものを最後に示すために目的語が文末にきています。
Jenkins walked back into the office and glanced out of the window. Turning around, he saw on the desk a gun. (ジェンキンズは事務所に戻り、窓の外を見た。振り返ると、彼は机の上に見つけた ―― 拳銃を)