動名詞とto不定詞

不定詞についているtoは、もともとは方向性を示すものです。そこから傾向として、to不定詞は動作の方向性、つまりこれから行う未来のことを表しています。一方の動名詞は、過去や現在のこと、そこから一般的なこと、そしてその概念そのものを指し示します。

1 to不定詞があとに続く動詞
あとに不定詞が続く動詞は次のようなものがあります。
claim, decide, decline, demand, desire, determine, expect, hope, learn, manage, mean, offer, pretend, promise, refuse, resolve, seek, wish
これらは、「未来に向かって~する」というニュアンスがあります。つまり、予定された行為と向きあうという意味で動詞的な色彩が強いのです。そして、何かを要求・希望する、何かを意図・決心する、何かを賛成・援助・約束する、何かを期待するなどの意味を持つことが多いのです。また、動作の実現に積極的な含みを持っている点も特徴となります。
We helped to clear up the mess.
I expect to be there this evening.
You must learn to be more patient.

否定形が使われている時も将来への約束や決意をしめしています。
He agreed not to tell it to anyone.
They promised not to shoot first.

練習問題1
次の文を不定詞の部分に注意して日本語に訳しなさい。
(1) I asked to be given leave for a week.
(2) We aim to please our customers.
(3) John promised to be at the station at 10 o’clock.
(4) We agreed to go skiing.
(5) We guarantee to deliver within a week.

2 to不定詞の用法の特徴
to不定詞は未来を示すという点を確認するために次の例文を見ていきましょう
(a) He is not a man to speak ill of others.
(b) He is not a man who speaks ill of others.
上の2つの文はどのように意味が異なるでしょうか。(a)はto不定詞のto do が使われているので、これからの話を意味します。つまり、「彼は(これから)人の悪口を言うような人ではない」という意味になります。(b)は、whoの関係節が使われていますので、「彼は(習慣的に)人の悪口を言うような人ではない」という意味になります。
(c) The zoo was crowded with people to see the pandas.
(d) The zoo was crowded with people who had come to see the pandas.
動物園はパンダを見に来た人で混雑をしていたという意味ですが、(c)はパンダをこれから見ようという人で混雑しているというニュアンスになります。(d)は過去完了のhad comeがあり、実際は見終わった人と、これから見る人とで混雑している意味から、こちらが自然な文となります。ところが、待合室では、これから見てもらう人が多いので(e)のように、to不定詞が普通となります。
(e) The waiting room was crowded with people to see the doctor.

3 動名詞があとに続く動詞
あとに動名詞が続く動詞として、次のようなものがあります。
admit, avoid, consider, deny, enjoy, escape, excuse, finish, give up, imagine, involve, mind, postpone, put off

これらの動詞はいずれも、「現在あるいは過去にしたことを~する」というニュアンスがあります。また、抽象性が高まりそのことがイメージされるので、時間的に中立(現在)か過去のことを示します。何かを回避、延期・遅延する、何かを終止・休止する、何かを反復繰り返すなどの意味を持つ動詞が多くて、動作の実現に対して消極的な含みを持つ動詞が多いのです。さらには、完全に名詞化された「概念」「思い出」とか「アイディア」を表現するには動名詞が適切です。この点で、不定詞は動詞的で動きがあるのに対して、動名詞は名詞的で静的であると言えましょう。
(f) Can you imagine working under her?
(g) Would you consider working for me?
これらimagine, consider, suggestは将来のことに関与する動詞であっても、アイディアとして何かを想像する、あるいは可能性として考慮してみるという意味が強いので目的語としては動名詞が選ばれます。
(h) Somehow or other he escaped being punished.
(i) A lazy person delays starting a job.
(j) Don’t put off studying until the last moment.
(k) He stopped talking.

練習問題2 次の動名詞の部分に気をつけて日本語に訳しなさい。
(1) She enjoyed singing to herself.
(2) He practices flying a glider every weekend.
(3) The thief admitted entering the house.
(4) He denied having ever touched the safe.
(5) I missed seeing the film on TV.
(6) I finished reading the book last night.
(7) You must avoid getting involved in such matters.

4 deny, refuse, avoidの違い
動詞のdenyとrefuseは似ていますが、どのように違うのでしょうか。動名詞とto不定詞の違いから、この2つの動詞の違いを見ていきましょう。denyは、動名詞(目の前の動き、事実性のあることのみに関連する)を目的とするので、He denied knowing the truth.(彼はその事実を知っていることを否定した)、I will deny having met her. (彼女に会ったことを否定するつもりだった)のように使われます。一方、refuseは不定詞(未来のことに注目している)のみを目的語にします。I will refuse to go to the party.(そのパーティに [未来に] 行くことを断る)のように使われます。
また、refuseはtoを取ることから分かるように、「はっきりと向かい合って拒否する」というニュアンスがあります。avoidは行為と正面から向かわずにそれをかわすというニュアンスがあるので、動名詞を取ります。
I refused to talk with that woman.(あの女と話すのを断った)
I avoided talking with that woman.(あの女と話すのは避けていた)

5 不定詞と動名詞の両方を目的語とする動詞(同じ意味の時)
不定詞と動名詞の両方を目的語としてとる動詞があります。次のような動詞です。
attempt, continue, intend, like, love, plan, regret, remember, try

これらは、次に来るのが不定詞でも動名詞でも基本的な意味が変わらない動詞と変わる動詞があります。まず、変わらない動詞から見ていきましょう。
(1) You should not attempt to climb/ climbing that mountain.
(2) What do you intend to do /doing after graduation?
(3) I plan to come back/ coming back on Monday.
(4) They hate to work /working overtime.
(5) I like to get up/ getting up early.

ただし、厳密に言うと、一時的な気持ちを言うときは不定詞が使われます。
I like playing tennis, but right now I don’t like to play tennis.
上の文は、一般的にはテニスは好きであるが、一時的には(今、これからは)疲れか何かで、テニスはしたくない、という意味になります。
不定詞と動名詞の両方を目的語とする動詞(異なる意味の時)
不定詞と動名詞で意味が大きく変わる動詞を考えてみましょう。不定詞を目的語とするのは未来指向でこれからすること、動名詞を目的語とするのは過去指向ですでにしたことを表す、という傾向があります。次の練習問題を解いて、そのことを確認してみましょう。

練習問題3 次の4つの文の意味の違いが分かるように日本語に訳しなさい。
(1) I remember posting it.
Remember to post it.
(2) My hobby is reading comics.
My dream is to live in Italy.
(3) I regret to tell you that the situation is very serious.
I regret telling you that story.
(4) Nice to meet you.
Nice talking to you.

6 To不定詞と動名詞が主語や目的語になるとき
ともに「~すること」を表すが、それぞれ微妙な違いが出てきます。次の3つの文を比較してみましょう。
(a) To smoke too much is bad for the health. (タバコの吸い過ぎは身体に悪いのです)
(b) Smoking too much is bad for the health.
(c) It is bad for the health to smoke too much.
to 不定詞は個別的なこと、動名詞は一般的なことを示すので、(b)の方が自然と感じられます。ただし、itで文を始めてto 不定詞を後ろに持って行けば、to不定詞が先頭に来る文よりは、より自然と感じられます。次の(d)と(e)は個別的な話ですので、to不定詞が使われます。
(d) It’s always a great pleasure to see you.(あなたとお会いするのはいつも喜びです)
(e) It seems impossible to save money. (お金を貯めるのは不可能のようです)
動名詞は「現実・一般的な事柄」を示すので、分かり切った情報であることが多く、旧情報になりやすく文頭に来ることが多いようです。
Having an e-mail friend is easy and popular today. (電子メールの友人を持つことは今日では簡単で多くの人がしていることです)
一方、不定詞は「未来や可能性」を示すので、新情報となりやすく、文末に来ることが多いのです。
It is difficult to speak several languages. (いくつかの言語を話すのは難しい)
下の例文ですが、動名詞ならば、「ここで働いている」の意味ですが、不定詞ならば、「これからここで働く」という意味になります。
You will find it enjoyable to work here. (これから、ここで働くのは楽しいことでしょう)
You will find it enjoyable working here. (ここで働いているのは楽しいことでしょう)

☛To 不定詞が個別的であるので、「仮の話」というニュアンスがあります。そのために、仮定法の意味を示すときはto不定詞が好まれます。
To wait would have been a mistake. (待つのは間違いだったろう)
一方「実際に待っていた」ことを表す場合は、to waitではなくて、事実性の強いwaitingを使う方が自然となります。
Waiting has been a mistake. (待つのは[待ったことは]間違いだった)

12-10 外置(itで置き換えて、後ろに持って行くこと)
to不定詞、動名詞ですが、SVOCおよびSVOAの構文では、目的語が動名詞ですとitで置き換えて後ろに移動させることが可能です。なおto不定詞やthat節の場合は後ろに移動することが義務的になります。
You must find working here exciting. (ここで働くのはわくわくすることだと必ず分かりますよ)
You must find it exciting working here.
* I made to settle the matter my prime objective.
I made it my prime objective to settle the matter. (その問題を解決するのが私の第1の目標にしました)

12-11 動詞的か名詞的か
不定詞は動詞的であって、動名詞は名詞的であると述べましたが、実例として、現象の始動に重点がおかれているときは不定詞、始動した行為や現象そのものに重点が置かれているときは動名詞が使われます(中島1984:135)。
It began to rain. (雨が降り始めた)
It began raining. (雨が降り始めている)
He started to speak, but stopped because she objected.(彼は話し始めたが、彼女が反対したのでやめた)
He started speaking and kept on for more than an hour.(彼は話し始めて1時間以上も話していた)