強勢(stress) とアクセント (accent) は同じような意味で使われる。学生が勉強するときには、その用語の違いを意識する必要はないだろう。音声学の本を読んでいても、使い方は執筆者によって異なっている。

厳密に言うと、強勢は音の強さを示す。一方のアクセントは、音の強さ+音の高さ+音の長さを総合している。

英語の音声だけを述べるときは、「強勢」という用語を用いても問題はないが、これが日英語の音声を対照的に述べるときは「アクセント」という用語の方が好都合である。

英語のアクセントは、強弱アクセント(stress accent)である。日本語のアクセントは、高低アクセント(pitch accent)である。このように述べて日英語を比較していくのだが、用語の統一性という視点からすると、アクセントという両言語に適応できる用語を用いる方が便利である。

文は単調に発音されると、どこが区切りか分からなくなる。アクセントをつけることで、語と語の境界が分かりやすくなる。この機能は頂点表示機能(culminative function)あるいは境界表示機能(demarcative function)と呼ばれる。

アクセントにはその位置によって語の意味が異なる。これは弁別機能(distinctive function)と呼ばれている。音素の配列上は同じ構造を持つ二つの語を「強弱」や「高低」という特徴で区別(弁別)するのである。日本語では雨(め)と飴(あ)のように高低アクセントで区別する(ここでは、下線部をひいた箇所がアクセントが高いことを示す)。英語ではINcrease(名詞)とinCREASE(動詞)のように強弱アクセントで区別する(ここでは、大文字で書かれた部分が強勢があることを示す)。

英語の曖昧母音である/ə/ は強勢の置かれない部分によく現れる。日本人の耳には「アイウエオ」のどの音のようにも聞こえてしまう。舌の位置が決まらずに真ん中あたりに来るので、「アイウエオ」のいずれにも聞こえる。

しかし、日本語の高低アクセントでは、音が低くなることはあっても、弱くなることはない。一定の音色は保っている。そのために、日本人は英語の/ə/をはっきりと発音してしまう傾向がある。特に外来語などをカタカタで覚えたりすると、そのことに影響されて、不自然な発音になってしまう。capital (キャピル)では、強勢のない下線部の音も日本人ははっきりと発音してしまう。

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