2016-08-03

IPAとは、国際音声記号である。その略は、International Phonetic Alphabet である。あらゆる言語の音声を文字で表記する目的のために、国際音声学会が定めた音声記号である。

スラッシュ / / で書かれたIPAは、簡略表記(英: broad transcription)と呼ばれ、各言語・表記体系ごとに認知・区別される音素(phoneme)に基づく大まかな発音表記を意味する。簡略表記では、異音は表記上区別されず、一つの音素と一つのIPA記号が対応する。

角カッコ [ ] で書かれたIPAは、精密表記(英: narrow transcription)と呼ばれ、各言語・表記体系ごとの認知・区別事情を考慮せず、純粋に音声学(phonetics)に基づく、調音方法によって物理的に区別された詳細な発音表記を意味する。

しかし、IPAはかなり細かくて使いづらいので、日本人向けには、Jones式発音記号が用いられている。これは音声学者Daniel Jonesが The Pronunciation of English (1918) の中で用いた発音記号が元になっているもので、日本国内で発行されている英和辞典などで多く用いられている表記法である。ただし、問題点もあり、明らかに違う母音である/i/  /iː/ や/u/  /u:/では、一方は他方の音を単に伸ばしたり縮めただけであるという風に解釈する恐れがある。そのために、次のように /i/ と /ɪ/; /u/ と /ʊ/ として記して、同じものであると錯覚させないようにする表記法がある。なおJones式の発音記号も角カッコ[ ]で示すが、IPAの精密表記とはかなり異なる。

音声学のテキストの執筆方針をみると、とりあえず、Jones 式発音記号として/  / を使っている。しかし、細かい発音の記載は IPAに基づいた[  ]で行っている。

photo credit: DSCF9428 via photopin (license)
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