2016-07-07

SVO型が基本となる

五文型の文のうちでどれが基本かと問われれば、SVO型が基本であると答えるのです。たとえば,I bought this book at the bookstore yesterday.(私はこの本を本屋で昨日買った)という文は、“I bought this book”まではSVOという要素が配列されて成り立っていて、そこに、“at the bookstore yesterday”という修飾語句(副詞句)が付加されるのです。

このとき,*I yesterday bought at the bookstore this book.のように、修飾語句が主要素の間に生じる文は普通ではありません。このように,英文では、5文型における主要素の配列を完成させた後に修飾語句を付加的に配置していくと考えることできます。

第3文型SVOと英語のリズム

英語のリズムは「名詞-動詞-名詞」を基本として成り立っていると考えられます。
(a) Can I look at the document? (その書類を見てもいいかい?) 
(b) Can I have a look at the document? 
この二つの文は同じ意味ですが、使われる頻度数では、(b)の方がよく使われます。この「名詞-動詞-名詞」のリズムに最も適合するのがSVO型をとる(b)の文です。この事実は、SVO型が英語において最も基本的な文型であることを示している一例と言えましょう。なお、これは情報構造の視点からの説明も可能です。

SVOO型の意味的制限

SVO型が基本であることの例として、さらに次のことが挙げられます。SVO型と比較すると,SVOO型については、この文型になる動詞の数は限られており,またSVOO型の方に意味的制限が強いという特徴があります。たとえば,「与格交替」として知られているSVO型とSVOO型との書き換えには、次のような現象が見られます。
(a) The teacher taught English to the students. 
(b) The teacher taught the students English.
 
通常この2文は書き換え可能であると考えられており、実際、知的意味はどちらもほぼ同じです。しかし,これらの意味をより詳細に検討すると,(a)のSVO型では単に学生に英語を教えたということだけを述べていて、学生が教えられた英語を身につけたかどうかには言及していません。一方(b)のSVOO型では、「学生は教えられた英語を身につけた」という「行為の影響」までもが含意されています。これは2つの目的語の間に所有関係が生じている、つまりIO(間接目的語)がDO(直接目的語)を所有している関係を示しているとも考えられます。このことは,次の二つの文の中で、(d)が非文となることからも明らかです。

(c) The teacher taught English to the students, but he didn’t teach them anything.
(d) *The teacher taught the students English, but he didn’t teach anything to them.

このようなことを考慮すると,SVO文型の方がより基本的であり,そこに付加的な意味が表れているのがSVOO文型であると考えられます。SVO文型からの拡張によってSVOO型は生じたと理解することが可能です。

photo credit: bookstore window 02 via photopin (license)
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