2016-01-20

否定と情報構造

否定語はその文の情報価値が最も高い部分と結びついた形で解釈されるのが普通です。次の文の解釈はどうなるでしょうか。

He didn’t kill the bear with the gun.  この文は情報価値が最も高くて文末にあるwith the gunを否定するようなかたちで、次のように解釈されるのが普通です。 He killed the bear, but not with the gun. (彼は熊を殺したが、その銃で殺したのではない)

以下の文でも否定語は、情報価値の最も高い部分を否定しています。
(a) John isn’t playing tennis very well. (ジョンはテニスがとても上手というわけではない)
(b) I did not have breakfast this morning.(今朝は朝食を食べていなかった)
(c) He is not a good student. (ジョンは優秀な学生ではない)
(d) John is not a bachelor. (ジョンは独身ではありません)

(a)と(b)では、文末にあるvery wellとthis morningを否定するような意味で解釈されます。(c)では、最も情報価値の高いのは、goodの部分なので、否定されるのは、goodの意味で、studentの意味が否定されるのではありません。(d)の文を考えてみましょう。文中のbachelorは、「結婚していない、成人の、男性」というさまざまな意味を持っていますが、最も情報価値の高いのは、「結婚していない」という意味の箇所です。bachelorを否定するとは、その箇所を否定することで、「成人の」、「男性」という意味は否定されません。つまり「ジョンは独身ではない」という意味になります。

(参考:安井『英文法総覧』開拓社 2005: 538))